S&P500の力強いチャートを見るたびに、少し複雑な気持ちになりませんか?
「素直にインデックスファンドを買っていれば、もっと資産は増えていたかもしれない......」
頭ではインデックス投資が多くの人にとって最適解に近いとわかっているが、それでも個別株を選んでしまう。なぜなら自分の知識と分析で優れた企業を発掘し、市場平均を上回るリターンを上げることこそ投資の醍醐味だと信じているからです。
そうして丹精込めて作り上げたあなたのポートフォリオには、きっと名だたる優良企業が並んでいることでしょう。誰もが知るトップ企業、安定した高い利益率、健全な財務。まさに非の打ちどころのない布陣です。にもかかわらず、なぜかパフォーマンスはS&P500に及ばない。そのジレンマに心当たりはないでしょうか。
##パフォーマンスが振るわない理由
もしあなたのパフォーマンスが伸び悩んでいるとしたら、それは決して銘柄選定のセンスが悪いからではなく、むしろ選んだ企業が「良すぎた」、「成熟しすぎていた」ことに起因している可能性があります。
「ROICがきれいに上昇している」「利益率の推移が理想的」のような、静かで整った絵画のような企業に惹かれて作り上げたポートフォリオだったりしないでしょうか?アートコレクターのように銘柄を収集してしまったポートフォリオに並ぶのは「完成された傑作」ばかり。しかし投資の世界では、誰もが認める傑作の価値はとうの昔に株価に織り込まれてしまっています。
これらの成熟企業は、安定はしていますが、かつてのような爆発的な成長は期待しにくい。株価が大きく飛躍する「最もおいしい時期」は、残念ながら過ぎ去っていることがパフォーマンスが振るわない最大の原因と言えるでしょう。
###「コレクター」から、未来を育てる「プロデューサー」へ
では、インデックスを上回るリターン(アルファ)はどこから生まれるのでしょうか。その答えは視点を変えることにあります。完成品を収集する「コレクター」から未来の価値を育てる「プロデューサー」へと視点を転換するのです。
####視点1:「未完成の傑作」にこそ宝は眠る
私たちが探すべきなのは完璧な企業ではありません。むしろ「今はまだ課題があるが、それが解決されれば大きく化ける可能性を秘めた企業」です。
- 技術は一流だが、マーケティングに課題がある企業。
- 業界の構造変化により、一時的に業績が低迷しているが、変革の兆しが見える企業。
- 有能な新経営陣が、長年の課題だった事業のテコ入れに本気で乗り出した企業。
こうした企業の「弱点」や「課題」は、裏を返せば、それだけ大きな「伸びしろ」があるということ。その成長ストーリーを見抜き、まだ市場の評価が追いついていない段階で投資することこそ、個別株投資の妙味です。
####視点2:未来の可能性を評価する"育成型ポートフォリオ"
財務諸表という「過去の成績表」を精査することは、もちろん投資の基本です。しかしそれだけでは十分ではありません。これからは経営者のビジョンや戦略、企業文化といった、「未来を創造する無形の資産」にも評価の軸を広げてみましょう。
- 「この経営者の先見性があれば、きっと市場をリードするだろう」
- 「この独自の企業文化こそが、持続的なイノベーションの源泉だ」
こうした定性的な「構造美」まで含めて評価することで、あなたのポートフォリオは単なる優良企業の詰め合わせではなく、あなたがその未来を信じて伴走する育成型ポートフォリオへと昇華します。
企業の業績が持つ美しさを否定する必要は全くありません。しかし、これからはすでに完成された静的な美しさだけでなく未完成なものが完成へと向かうプロセス、すなわち動的な美しさにも目を向けてみてください。
あなたが企業の「価値を上げる物語」に参加できたとき、それはもはや収集というアートではなく真の「投資」と呼べるものになるでしょう。