米国銘柄分析 | Vail Resorts Inc. (MTN)
山岳リゾートとスキー場運営を手掛ける**Vail Resorts Inc. (MTN)**について紹介します。
世界の37か所でリゾートを運営しており、例にもれずCOVID-19によりリゾート地の閉鎖など大きな影響を受けた企業の1つです。ワクチンの普及に伴ってどれほどリゾート業界に活気が戻るのか不明ですが、ひとまず最近の様子を調べてみようと思います。
企業概要
Vail Resortsは複数のリゾート系の子会社をまとめた持ち株会社です。スキーやスノーボード、ハイキングやマウンテンバイクといった冬と夏のアクティビティを楽しめるリゾート施設の運営、ホテルやコンドミニアムといった宿泊施設を保有しています。
典型的なリゾート系の景気循環銘柄となりますね。ティッカーもMTNとMountainを意識したものとなっており、洒落ています。
時価総額は約$13.4Bilです。COVID-19の直撃した2020年度の売上は$1.96Bilで、2019年度の$2.27Bilに対して**-13.6%**でした。直近(2021/4/23)では好調なガイダンスを発表しており、予想を上回る業績の改善が続いていることを報告しています。
プロダクト(事業)
Vail Resortsは山岳、ロッジ、不動産の3つのセグメントに事業を分類しています。
山岳が収益のメインであり、不動産はグラフにするとほぼ見えない寄与率ですね。
山岳
山岳セグメントでは37のリゾートとスキーエリアの運営があります。このうち6つのリゾートは2019/2020年のスキーシーズンにアメリカでもっとも訪問されたリゾートのトップ10となっています。
リフトチケットの販売、スキーやスノーボードのレッスン、器具のレンタルや販売、飲食店の運営など包括的なサービスを手掛けています。冬のアクテビティ以外にもハイキングなどの夏にも利用できる山岳リゾートとのこと。
山岳リゾートで気になるのは「辺鄙な場所過ぎないか」ということですが、比較的人口密集地が付近にあるリゾート地を確保できており、合計1億人を超える人口が付近にある立地となっています。代表的な山岳リゾート地としてはロッキー山脈(コロラド州・ユタ州)、北西部の太平洋沿岸(カナダのブリティッシュコロンビア州)、タホ湖(カリフォルニア州・ネバダ州)があります。
スキーという季節性のアクティビティが収益に大きく寄与するため、四半期ごとに収益の性格が大きく変わることに注意が必要です。北米のスキーシーズンはQ2とQ3(11月中旬から4月中旬)、オーストラリアのスキーシーズンはQ1とQ4(6月から10月上旬)です。
項目 | 2020 | 2019 | 2018 | 2017 | 2016 |
---|---|---|---|---|---|
スキーヤー | 13,483 | 14,998 | 12,345 | 12,047 | 10,032 |
ETP | $67.72 | $68.89 | $71.31 | $67.93 | $65.59 |
山岳セグメントではスキーヤーの訪問数が重要な指標として設定されていますが、毎年のようにリゾートを買収しているため年度ごとの訪問者の増減の比較に意味がないため割愛します。ETPはリフト収益をスキーヤーで割った値です。こちらも同じく割愛します。
セグメント内の売上に占める割合を示した図が上記となります。リフト収益が大きな割合を占めていることが分かります。COVID-19によりリゾート地の閉鎖を決断したため、年間パスポート購入者に対しては未使用日数に応じたクレジットオファーの提供にて対応しています。2019/2020年度パスポート購入者に対して、2020/2021年度パスポートの購入時や器具のレンタル時に割引を行うという事です。この決定による大部分の影響は 2021年度Q2からQ3にかけて繰り越し費用として消化される見込みですが、完全な消化は2022年度までかかるとされています。(2021年度Q2決算時点で繰り越し費用が想定外との報告はない)
宿泊
高級ホテルブランドのRockResortsなど含む宿泊施設によるセグメントです。コロラド州やタホ湖、ユタ州などのリゾート地や周辺地域にマンションやゴルフコースを保有しています。
宿泊可能な部屋数はホテルとコンドミニアムを合算して約6,000で、山岳セグメントとのシナジーを期待しての投資が行われています。飛行機でリゾート地を目指した際、コロラド州に降り立つことが多いため、コロラド州における陸所輸送も手掛けているそうです。
項目 | 2020 | 2019 | 2018 | 2017 | 2016 |
---|---|---|---|---|---|
ADR | $310.76 | $300.47 | $300.90 | $302.80 | $280.38 |
RevPAR | $90.37 | $121.81 | $131.08 | $127.95 | $122.61 |
OCC | 29% | 41% | 44% | 42% | 44% |
ホテルの客室平均単価(ADR)は2020年度に$310.76、RevPARが$90.37、客室稼働率(OCC)は約29%でした。2019年度のOCCは約40%だったので、やはりCOVID-19の影響が見て取れます。他のホテル業者に比べると季節性のアクティビティに連動する性質が強いため、OCCはやや低くなる傾向にあります。業界平均のOCCは正常な年では大体60%程度なので3割程度低くなる傾向と考えられそうです。
業績
過去10年分のMorningstarより取得したデータをグラフ化して掲載します。
COVID-19の影響が発生する2020年度までは粗利益率の改善が目に見えて表れており、40%程度でした。ROICも10%弱でした。2020年度はCOVID-19の影響で全ての値が悪化しており、辛うじて利益が捻出されている状態ですね。
キャッシュフローも業績と同様に2020年度は落ち込んでいます。
ただ営業CFマージンは安定して20%前後であり、ビジネスとして現金を生み出す力に優れているように見えて心強い印象です。
2020年度は減配されています。
例年であればフリーCFに占める配当性向は50%強ですが、減配してなお2020年度は100%に届こうかという水準でした。好意的に言えば赤字とならない範囲で精いっぱいの配当を守り抜いたと評価もできるでしょうか。贔屓目が過ぎるかもしれません。
1株辺りのEPSは直近で不安定に見えてCOVID-19から回復した後にどうなるのか見守りたいところです。ただ、1株当たりのキャッシュフローと売上は増加基調が見て取れるため、その点は好感しています。
記事執筆時点(2021/4/25):MTNのホルダーであり、バイアスがかかった内容の可能性があります。