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Stable Diffusionの魔法:非AI技術者向けに画像生成技術を解説

#ソフトウェア#Stable Diffusion

Stable Diffusionの魔法:非AI技術者向けに画像生成技術を解説

近年、AI技術の発展により、さまざまな分野でイノベーションが起こっています。それらAI技術の中でも特に注目を集めているのはやはり視覚的に凄さを実感できる画像生成技術ではないでしょうか。これは、AIがテキストや他の入力情報に基づいて、リアリスティックな画像を生成する技術のことです。そして、その最先端を行くのが今回紹介する「Stable Diffusion」です。

本記事では、Stable Diffusionの仕組みについて、非AI技術者の方でも理解しやすいように解説していきます。専門用語が登場した場合には、その用語の紹介も含めて説明を行います。私自身、Stable Diffusionの魔法に触れてあっという間にその素晴らしさに魅了されてしまったのですが、この記事があなたの理解の助けになればうれしいです。

Stable Diffusionとは何か?

Stable Diffusionは、AIを用いた画像生成技術で、拡散モデルというアプローチを使用しています。この技術により、高品質な画像をユーザーが指定したテキストプロンプトに従って画像を生成できるため、クリエイティブな表現や独自のアイデアを具現化できます。

拡散モデルとは、画像を生成するために「拡散過程」という手法を用いるモデルのことを指します。拡散過程とは、画像にノイズを徐々に追加していくことで、元の画像が完全にランダムなノイズの状態に変わる過程を言います。Stable Diffusionでは、逆のプロセスを行い、ランダムなノイズから徐々にノイズを除去して元の画像を復元します。

次の章では、この拡散過程の基本について、ノイズの追加と除去の概念を説明していきます。

拡散過程の基本

Stable Diffusionが画像を生成するための基本概念は、拡散過程です。拡散過程は、ノイズの追加と除去を繰り返すことで画像を生成する手法です。以下では、ノイズの追加と除去について説明します。

ノイズの追加

拡散過程では、元の画像に徐々にノイズを追加していきます。これを繰り返すことで、画像が完全にランダムなノイズの状態に変わります。このランダムなノイズが画像生成の出発点となります。

ノイズの除去

Stable Diffusionでは、ランダムなノイズから徐々にノイズを除去していきます。この過程で、テキストプロンプトに基づいた画像が生成されるように、ノイズの除去方法が調整されます。ノイズが完全に除去されると、生成された画像が完成します。

画像生成のステップ別の様子

上記に掲載した画像が生成される様子をステップ別に見る図を確認するとイメージがわきやすいと思います。この画像では「1girl」という情報だけを与えてノイズを取り除いていく様子です。

AIモデルはノイズの追加と除去を制御しています。大量の画像とテキストデータから学習し、どのようにノイズを追加・除去すれば、テキストプロンプトに従った画像が生成されるかを理解しています。良くある誤解では Stable Diffusionは画像データ自体を学習して切り貼りしているだけという指摘があります。しかし前述したようにStable Diffusionはノイズ除去を核としているため画像の切り貼りを行っているわけではありません。

条件付きモデルとプロンプト

Stable Diffusionの画像生成は、条件付きモデルという仕組みを利用しています。条件付きモデルは、与えられた条件(テキストプロンプト, 呪文)に従ってデータを生成するモデルです。

モデルは、学習時に大量の画像とテキストデータを用いて訓練されます。訓練により、モデルはテキストプロンプトが与えられた際に、適切な画像を生成する方法を獲得します。生成プロセスでは、モデルはプロンプトに基づいてノイズの除去方法を調整し、望ましい画像を生成します。

このため例えば実写画像を集中的に学習したモデルではフォトリアリスティックな画像生成が得意となり、反対にアニメ画像やイラストを集中的に学習したモデルではそのような画像生成が得意となります。「女の子」というテキストプロンプトが与えられた場合、このノイズを取り除くと現れるのはリアルな女の子だなと解釈するか、アニメ的な女の子だなと解釈するかの違いが出現してくることになります。

学習と訓練

Stable Diffusionモデルの学習には、大量の画像とテキストデータが使用されます。学習プロセスでは、モデルはテキストプロンプトとそれに対応する画像の関連性を理解し、テキストプロンプトに従って画像を生成する方法を獲得します。

訓練データには、さまざまなテーマやカテゴリの画像と説明文が含まれており、モデルはこれらのデータから画像とテキストの関係を学びます。繰り返しの学習を通じて、モデルはより正確にテキストプロンプトに従った画像生成ができるようになります。

そのため私たちが Stable Diffusionを使用してイメージした画像がより生成されやすくするためには、直接的な表現だけでなく、学習データがどのようなキーワードと紐づいていたかを想像することが重要となってきます。Stable Diffusionの内面世界におけるベクトルの想像、なんて格好いい表現をされたりしていますね。

応用事例と今後の展望

Stable Diffusionは、高品質でリアリスティックな画像生成能力を持つため、さまざまな分野で応用が期待されています。例えばデザインやイラストレーション、広告、ゲーム開発、映画やテレビのVFXなどクリエイティブな表現を必要とする業界で活用されています。

また教育や研究、医療などの分野でもStable Diffusionが新たな価値を提供できる可能性があります。例えば科学的なシミュレーションや可視化、医療画像の解析や生成など、多様な用途で利用されることが予想されています。(なおOpenAIが提供する学習モデルの現在のライセンスでは、医療情報の提供を目的とした画像生成は禁止されています)

Stable Diffusionがローカル環境で利用できるようになり、学習済みモデルがコミュニティで広く共有されていることからもわかる通り、AIによる画像生成の民主化はまだまだ始まったばかりです。今後、Stable Diffusion技術はさらに進化し、より高品質でリアリスティックな画像生成が可能になるとともに、新たな応用分野が開拓されることが期待されています。