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米国銘柄分析 | L3Harris Technologies(LHX)

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米国銘柄分析 | L3Harris Technologies(LHX)

かつて宇宙は国家が威信をかけた開発競争を行う領域でしたが、いまや民間企業がロケットや衛星を頻繁に打ち上げ、まもなく宇宙旅行さえも商業化されることが視野に入る時代となりました。L3Harris Technologiesもそんな宇宙をビジネスの場としている企業の1つです。

今回はそんな、**L3Harris Technologies Inc(LHX)**について紹介します。

企業概要

L3Harris Technologiesは防衛産業と情報技術で知られる企業です。2019年にHarris CorporationとL3 Technologiesが合併したことで誕生した企業ですが、多くの防衛企業と同じく様々な企業買収の繰り返しにより発展してきた歴史を持ち、1890年にさかのぼることが可能です。

企業の公式年表は非常に読みごたえがあり一見の価値があります。ここでは概要をかいつまんで紹介するにとどめます。

前身の片割れであるHarris Corporationは、創業者のハリス兄弟が印刷機の自動給紙機を1890年に開発したことから始まり、その後しばらくは印刷機と印刷技術(リソグラフィ)を事業としていました。この時代にオフセット印刷などに高い技術力を保有するに至り、露光など集積回路に通じる技術を蓄積していくことになります。第二次世界大戦中の1945年にはその技術を用いて、高高度からの精密爆撃用の照準器を開発しています。

1949年には買収によりラジオとテレビを事業に加え、電波という技術への足掛かりを得ています。同じころ、宇宙環境下での電子機器の動作を研究する研究所の設立、軍用機へ空中偵察能力を付与する改修計画への参画などが行われ、現在へ続く事業が見えてくることとなります。1950年中盤からは遠隔計測の技術を発展させることでミサイルの精度向上や、高速飛行物の追跡アンテナなどを手掛けています。

その後、冷戦による宇宙開発競争の過熱に伴い同社の通信技術や測定技術は発展を続け、1970年代には無線通信と測定の分野における存在感を強く発揮する企業へと成長し、現在に至っています。

プロダクト・サービス

ハイライト

セグメント別の売上

企業概要からもわかるかと思いますが、L3Harris は通信と観測の分野に強みを持つ企業です。「C6ISR」と呼ばれる指揮管制や偵察といった国防における情報分野に精通しています。その性質上、国防総省や情報機関が利用するようなプロダクトが多いです。

Command, Control, Communications, Computers, Cyber-Defense, Combat Systems and Intelligence, Surveillance, Reconnaissance

事業セグメントは以下に示す 4 種に分類されています。

  • 統合ミッションシステム
  • 宇宙・飛行システム
  • 通信システム
  • 航空システム

合併の影響で年度別の比較が意味をなさないため、2019年度の会計報告資料に掲載された単年度の数値をグラフとしています。セグメントとして分割はされていますが、重複している分野が多くセグメント別にどうこうと考えるのはあまり重視しなくても良いのではないか、と感じます。

統合ミッションシステム

L3Harris-国防

統合ミッションシステム部門では、大別してISR、海洋、電気光学に分類されています。このセグメントに属する大部分は、元々合併対象であったL3 Technologiesが保有していた事業です。

ISRとは諜報、監視、偵察を意味する用語です。艦隊管理サポートやセンサー開発保守などを扱っており、主要な顧客はアメリカ政府、イギリス国防省、オーストラリア空軍、その他国家の防衛関連となっています。

海洋は海軍などアメリカと同盟国の国防組織、商用船などを顧客としています。C5ISRシステムの開発とインテグレーションを行うほかに無人の自立型ソリューション、船舶の電子制御などを手掛けています。

電気光学は高度なEO/IRセンサーと監視、照準システムの設計と製造など、軍用機の近代化と保守を手掛けています。EO/IRセンサーとは光学・赤外線を用いたセンサーのことで、高高度哨戒機や哨戒ヘリコプターなどに搭載されることが多いです。顧客にはNASAやアメリカ国防総省など、軍用と商用宇宙企業が含まれます。

宇宙・飛行システム

宇宙、機密情報、航空電子機器、電子戦システムの4部門で構成されるセグメントです。L3 TechnologiesとHarris Corporationが合併前に所有していた事業が混生されています。

高度なセンサーやアンテナを使用したインテリジェンス、地球観測・宇宙観測などの国家安全保障や商用の環境ソリューションを提供しています。宇宙空間からの地上の情報を分析する人工衛星などが含まれます。他には主に軍用機に搭載するセンサー、電子機器、電子戦装備を手掛けています。

全地球測位システム(GPS)に必須のコンポーネントをL3Harrisは保有しており、1970年以来のアメリカのGPS衛星の全てがL3Harrisのコンポーネントを搭載しています。

通信システム

国防組織向けに戦術無線通信、衛星通信端末、戦場用ネットワークを提供しています。

アメリカ特殊作戦群の線術通信プログラムへの採用や、有人・無人の航空機への搭載が行われています。

航空システム

小型無人航空機、誘導爆弾や射撃統制システムなど防衛航空製品。民間向けの空港のセキュリティ維持のためのソリューション、民間と軍用のパイロット訓練ソリューションなどを提供。

市場環境

L3Harrisに限らず防衛産業に位置する企業は、その性質上顧客が政府関連組織となる割合が非常に高いです。これはつまり収益性がその時々の政府の制作に依存する度合いが高いことを示しており、特にアメリカ国防総省の予算に対する依存をすることになります。

L3Harrisのここ数年のアメリカ政府への収益依存度は約75%程度で安定しています。

ただ、ここ数年でSpace XやBlue Originといった民間企業により衛星打ち上げへの費用に対する価格破壊が起ころうとしており、価格低下が進めばそれだけ人工衛星を様々な企業が打ち上げすることが見込めます。L3Harrisが保有する高度な人工衛星用コンポーネントがそれらの需要をどれだけ取り込めるのかで、収益依存度の改善が期待できそうです。

業績

データはMorningstarより取得。2019 年の買収により大きく今後の年度決算の内容は変わるため、以前のHarris Corporationにおける推移の参考にとどめてください。

業績の推移

利益率の推移

キャッシュフローの推移