SEからITコンサルへ転職した際の体験
ITエンジニアのコミュニティを観察しているとエンジニアは飽きたら転職を繰り返していくのが当たり前のように錯覚しますが、同じくエンジニアでありながら私にとっては未知の世界です。しかし紆余曲折あり、私自身も初めての転職活動を行ってみたのでそこで得た体験をシェアしようと思います。
今回伝えるのはシステムエンジニア職からITコンサルタント職への類似職への転職体験です。
本記事の内容
- 転職活動として行ったこと、流れ
- 履歴書と職務経歴書の作成
- 面接の対策
- 現職をやめる
私は新卒で入社した客先常駐メインのいわゆるSES企業で働いてきました。
システムエンジニアの業界構造からSES企業に所属していれば二次請け三次請けは当たり前で、多くの場合は単なる作業者としての役割だけが求められており、エンドユーザーと接する機会や設計に対して提案をしたりといった作業は期待されてない業界です。
必然的に将来を見据えると閉塞感を感じやすい立場だと思います。私の場合は30代というステージが見えてきたことでこの閉塞感を打開しようと決めましたが、この記事が似たような状況の人の参考になれば幸いです。
想定読者
- IT企業への転職活動の始め方が分からない人
- SEからITコンサルへの転職を考えている人
- ITコンサル職への書類選考が通らない人
転職活動として行ったこと、流れ
転職用SNSへの登録
私の場合は最終的に転職用SNS経由の企業と縁がありましたが、ITコンサルへの転職ではあまり向いていない感想です。
Qiitaなどのエンジニアコミュニティで「転職」といった検索に引っかかる記事を見ていると、多くのエンジニアが転職用SNSを利用していることに気が付きます。なので私もどういった企業があるのか調べるつもりで転職用SNSに登録してみました。
登録したのは「Wantedly」と「LinkedIn」です。
転職用SNSは簡単に言えば自身のプロフィールを載せて交流する場です。企業側が検索でたどり着いてアプローチをかけてきたり、知り合いと繋がって交流することができます。私の場合は企業からのアプローチを待つだけの用途で使用しました。
Wantedlyの感想
個人的にWantedlyは合わなかったです。
国内企業が立ち上げたサービスで、利用している企業もほとんどが国内企業です。待遇よりもやりがいを重視してマッチさせる志向を持ったサービスのため、キラキラした創業から間もないスタートアップ企業が盛んに声掛けを行っています。
やりがいを推しているだけあって各社は開発環境や技術要素を前面に押し出してアピールしてきます。しかしこれは反対に言えばやりがいはあるかもしれないが待遇が良いわけではないことの裏返しです。
Wantedlyでオファーされる年収は業界平均としては普通かそれ以下の会社が多いです。スタートアップの魅力は成功すれば大きな資産形成につながるのが魅力だと思っていましたが、創業者が儲かるだけに見えてしまいました。将来的な閉塞感を打破する目的で転職活動を始めた私にとって、スタートアップ企業は業績は非公開だし組織も成熟していないためリスクが高すぎました。
ただCMで見かけるような企業や上場企業なども多数声を掛けてくれるので、企業を知るという面では非常に有益でした。
LinkedInの感想
Microsoftが運営するサービスのため、声が掛かるのは外資系企業か国内大手企業ばかりでした。
外資系企業の場合は英語でのオファーとなる場合が多いです。国内に拠点を持つ企業にしても数が限られてくるので、Wantedlyと比較すると相対的に声が掛かる件数は少なめになります。
海外で活躍したいと考えているか、大手企業からのオファーを心待ちにしているのでなければオススメはしません。私の場合はたまたまLinkedInで声を掛けていただいた企業やエージェントと交流する機会を持ちましたが、効率は良くないです。
転職エージェントへの登録
転職エージェントは悪だと思っていましたが、頭ごなしに否定するほどの悪ではありませんでした。しっかりとどの転職エージェントからサポートを受けるかを下調べして特徴など見極めることが大事です。
- 希望とマッチしそうな求人が紹介されるようになる
- 書類審査や面接の企業からのフィードバックが得られる
- エージェントにアドバイスを求めれば相談に乗ってもらえる
上記が転職エージェントを利用した場合のメリットです。
私の場合はLinkedInで声を掛けてくれた転職エージェントと面談し、現在の状況や年収アップと潰しの利くスキルの習得を希望していることなど話していく中で、ITコンサルという職種がなかなかマッチしているように感じられました。なので ITコンサル系の求人に強みを持った転職エージェントへ登録することにしました。
転職エージェントは汎用系と特化系に分かれています。どんな業界でも満遍なく取り揃えている汎用系と、特定の業界や業種への特化系です。オススメしたいのは特化系の転職エージェントです。汎用系にも口コミを調べるために登録していましたが、面談も特にないですし機械的に条件マッチした求人が毎日メールで送られてくるだけなので、迷惑メールに放り込んでしまいました。
ただ特化系の転職エージェントでも最後は担当者との人としての付き合いになっていくので、いわゆる担当者ガチャになるという側面は否定できません。それでも書類の添削や落選してもフィードバックが得られるのは大きなメリットだと感じます。
履歴書と職務経歴書の作成
この段階で私は転職先の職種を ITコンサル系に絞ることに決めました。
ITコンサルは一般的にコンサルと聞いて連想するものとは別物です。
一般的なイメージに該当するのは「戦略系コンサル」といい、基本的には一流大学出身者などがハードワークをこなしながら少数の生き残りとなる世界です。対してITコンサルは顧客の課題解決に際してシステムの導入や改修で支援する職種です。言い方は悪いですが SIerとやっていることに大きな違いはありません。逆に言えばシステムエンジニアにとってITコンサルは延長上にある職種なので、これまでの経験が活かしやすい職種といえます。
私は結局6社に応募をしたのですが、5社から書類審査の合格を得ることができました。大体はITコンサル系の企業として検索すれば上位に出てくるような会社です。
履歴書の作成
履歴書は基本的にフォーマットが決まっているので、特に指摘無く転職エージェントより合格がもらえました。
dodaの履歴書テンプレートを使ってJIS規格の履歴書を作れば完了です。個人的な所感ですがよほど特徴的な経歴でない限り、企業側はほとんど履歴書は見ていないと思います。
職務経歴書の作成
下請けを探す現場面談ではなく、転職面談に使うのだからスキルシート形式はやめましょう
職務経歴書はITコンサル系の転職に限って言えば、Qiitaで絶賛されているスキルシート形式のテンプレートは役に立ちませんでした。
参考:職務経歴書(スキルシート)を作ったので公開します。「書くべきポイント」と「アンチパターン」まとめ
スタートアップ系の企業などどのような技術を扱えるのか重視している企業の場合はスキルシート形式でも問題ないですが、どのような立場でどんな考えをもって実績や役割を果たしてきたのかを重視したいITコンサル系の場合は、スキルシート形式の職務経歴書は問答無用でNGにする人事が多いとのことでした。
ただ、出来上がった職務経歴書はフォーマットこそ違いますが、結局は伝えたいポイントとして意識する内容に類似点は多いので、Qiitaの記事で参考になる部分は多かったです。
私が合格を貰った職務経歴書はリクルートが公開しているテンプレートのようなお堅いフォーマットを利用したものでした。
業務内容で意識して書いた点
業務内容の章では参画してきたプロジェクトについてそれぞれ書いていくことになります。
【目的】何をするプロジェクトだったのか、どんなシステムか。
【成果】自分が果たした貢献。動作速度の改善やコード量の削減、体制拡大への寄与など。特になければどういった機能を実装したのかなど。
【担当】どの立場でどのようなことを担当したのか、担当工程など。
【工夫】担当の中でどのような考えで何をしてきたのか。特に面接時のアピールの起点になる重要な部分。
他にも工数の規模やリーダー経験などあれば何人程度のリーダーを務めたのかや、リーダーとして行ってきたことが説明できると良いです。具体的な社名や製品名は許可がない限りは書かないようにしましょう。採用担当者もそういった事情は分かっているので概要レベルで十分です。
個人的に書いたアピール点
私は二次請けでの参画がメインだったのですが、幸いにも要件定義や設計に携わることのできるプロジェクトへ何度か参画したり、自社チームの開発リーダーなど勤める機会があったためその経験を軸に記載していきました。
後のフィードバックでは一通りの工程を経験していることや、リーダーとしてメンバーの面倒を見た経験がある点が評価されていました。
面接の対策
書類審査を通過すると次は面接です。
適性検査が行われることもありますが、無いことも多いです。SPIなどの対策本をやっておけば十分でしょう。
響かない回答をすると面接官から深く追求されて不備に気付けることが多いので、失礼な話ですが志望度の低い企業の面接で回答の響き具合を確認しておいたほうが良いです。
一次面接(現場)
スキルや考え方を語り、一緒に働く姿をイメージさせられるか
書類審査は誰が行っているのか知りませんが、少なくとも会社側が気になる素質を持っているから書類審査が通っているわけなので、自信をもって面接に挑みましょう。面接で落ちたとしても原則は自分の想いと会社が求めている人物像が違っているのが原因で、スキルが無いというわけではないので単に社風と合わなかったのだと思い割り切りましょう。
私の場合は「より上流からプロジェクトに参画できる技術者となりたく、そのためのスキルアップに挑戦できるITコンサルを目指す」という想いを軸に志望動機や、今後のキャリアパスの希望など語っていくことで面接を通過しました。
- なぜ転職するのか、今の会社じゃできないのか
- なぜその会社なのか
- いままでのプロジェクトで何が大変だったのか(どう乗り越えたのか)
- マネジメントとスペシャリストのどちらを目指すのか
- 強みと弱みは何か
- スキルアップのためにどんなことをしているのか
だいたい聞かれることは同じなので、それぞれに対して自分の中でストーリーを持っていればアレンジしながら語ることで面接官に納得感を与えることができるでしょう。想いが通じる話をしても落ちたときは会社とマッチしていなかっただけなので忘れましょう。
ITコンサルの場合、思考の瞬発力を見ている場合もあるので「ゆっくり考えて良いですよ」とわざわざ言われても実際にゆっくりしてはだめです。本当に騙された感じでムッとしますが、フィードバックで瞬発力がないと評価されたりします。
二次面接(役員、最終)
解像度高く中期的、長期的な展望を持てているか
役員クラスを相手にすると実績など覚えていれば語れるような内容ではなく、きちんと自分のキャリアパスを描けているのか、企業の考えとマッチしているのかといった思考面について深掘りされていきます。その場で考え始めたような回答ではかなりの確率で浅さが見抜かれように思うので、自分の成り立ちについて色々な角度で事前に考えておくと良いです。
例えば「入社したとしてどうなっていきたいのか、どうしていくつもりなのか考えを教えて」という質問に対して「より上流からプロジェクトに参画できる技術者となりたく、そのためのスキルアップに挑戦できるITコンサルを目指す」という上記で挙げた考えをそのまま回答したとしたら、あまり良い評価にはならないと思います。
抽象度が高すぎるというか、スキルが欲しいだけというか、とりあえず目先の希望を挙げてみただけであまり自分自身でも成長をイメージしきれていないんじゃないか、といった評価になるかと思います。
解像度を上げていくためには「それって普通のことじゃない?」という意地悪な質問が来た場合を想定して自問自答してみると、もっと深掘りした自分なりの解答が導き出せるようになると思います。
- どんな成長をしていくつもりか
- 転職の応募する企業はどういう考えで選ぶのか
- 応募したすべての会社で内定が出た場合にどの観点で選ぶのか
- 大学の学部選びはどんな考えから選んだのか
- 新卒での就職はどんな考えからそこを選んだのか
通過する面接と通過しない面接では、自分の目指すキャリアパスや経験を一貫性のあるストーリーで語れたかどうかで分かれました。あれもこれも語りたくなってしまいますが、時間は有限なのでまずは最も大事な想いを納得してもらうところを重視しましょう。(話が長いと冗長すぎるとして評価が下がります)
役員クラスは人間力が高い人が多いので、ちゃんと意図を汲み取ろうとしてくれた印象が強いです。話しやすい雰囲気や質問の展開をしてくれるので、しっかり想いを伝えましょう。
現職をやめる
志望していた企業から内定を頂ければ次は現職をやめる作業です。
就業規則などに退職の手続きに関しての決まりがあるはずなので、円満退職としたいなら手続きに従うのが賢明です。世間一般的には退職願を提出して、1ヶ月か2ヶ月の引き継ぎ期間をもって引き継ぎを完了し、退職届を出して退職という流れになるはずです。
民法上は2週間で退職できるので、最終手段としてそういった選択肢もあることは覚えておきましょう。私の場合は就業規則にのっとって申し出たのですが、さらに1ヶ月の引き継ぎ期間を設けての退職をすることになりましたが、転職先も問題ないと言ってくれたため許容範囲でした。
ちなみに内定いただけた際のオファーはかなり良く、非常に満足できる内容でした。(年収が数百万円アップしました)
まとめ
エンジニア界隈の転職はQiitaを信じれば上手くいくと思っていましたが、業種によってQiitaの知識が役に立たないこともあるのだと学びました。
スタートアップ企業など今を駆け抜ける企業では開発メンバーとして活躍できるかを重視するためにスキルシート形式が喜ばれますし、その真逆を喜ぶ環境もあります。一番いいのはその業種や業界で採用担当をやっている人たちに話を聞くことですが、難しいようなら特化した転職エージェントに聞くのがいいでしょう。
また、転職を今は考えていない人でも職務経歴書を書いてみるのをオススメします。
これまでのキャリアを列挙していくことで客観視した自分の経歴を見つめ直すことができるようになり、いまの業務に対してどう接することで自分の市場価値を高めていくことができるかを考えるきっかけになるはずです。転職しない選択をしたとしてもこれは無駄にならないでしょう。定期的に自分のキャリアを棚卸ししていないと、記憶も欠けていくので思い出して一から書いていくのはかなりしんどいという理由もあります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。以上が私が SE から IT コンサルへと実際に転職する際に得た知見です。必ずしも最適解とは限りませんが、参考となっていれば幸いです。