米国銘柄分析 | DocuSign(DOCU)
今回は、電子署名ソリューションを手掛ける**DocuSign(DOCU)**の銘柄紹介です。
昔ながらの紙を使った契約や稟議は時間がかかりコストがかさみます。DocuSignはそんな昔ながらの手法を電子上の署名に置き換えるソリューションを提供することで成長してきた企業です。アメリカでは以前から存在感を増しつつありましたが、コロナ禍を機に日本でも一気に注目が集まった企業でもあります。
そんなDocuSignがどのようなビジネスを築いており、業績はどのような調子なのかを掘り下げてまとめていきます。
企業概要
2003年に創業したDocuSignは、ビジネスの加速と日常生活をシンプルにすることをミッションに掲げた企業です。
電子署名テクノロジーを駆使して企業や個人事業主といった人々に契約や稟議といった一連のプロセスを自動化するソリューションを提供しています。このソリューションを利用することで業務速度の向上、ミスの削減やプロセスの自動化といった価値を創出しています。
世界で100万社10億人のユーザーが存在し、アメリカ政府機関でも採用されています。
事業内容
その成り立ちからDocuSignは電子署名に特化したサービスを手掛けていた企業ですが、現在は署名単独の機能から契約というフロー全体にまたがるビジネスの構築を目指してAgreement Cloudという製品の拡大に力を注いでいます。
Agreement Cloudは契約を準備、署名、実行、管理の4領域に切り分け、それらを統合してサポートするソリューションです。DocuSignが手掛ける個々の領域をカバーするソリューションを統合して活用できるようにしたパッケージソリューションで、シェアを伸ばすことができれば広範な市場を開拓できると考えられます。
従来の契約フロー
- 準備:契約の自動生成
- 署名:いつでもどこでも法的にも有効な署名機能
- 実行:承認や公正といったライフサイクル管理と支払いなどのプロセスの自動化
- 管理:契約文書の一括管理や検索、状況の把握
収益構造
DocuSignの収益のほとんどはサブスクリプション収益となっています。
価格設定
企業向けの契約では使用するユーザー数と年間に作成する契約数で従量課金となる設定となっています。
当然ですが送信側のみが料金を支払うわけで、受信側がDocuSignを使用することが強制されるわけではないためシェア総取りとはならないビジネスモデルということが見て取れます。競合へと移動されないように継続的なアップデートは当然必要そうですね。存在感のある競合といえばAdobeの電子署名ソリューションがあるため、DocuSignに投資する場合はそちらの動向も随時チェックする必要がありそうです。
決算データ
StockRowから取得したデータをグラフ化して掲載します。
業績の推移
買収による売上増加も含まれるため単純なオーガニック成長を見ることはできませんが、売上は一律で右肩上がりです。
キャッシュフローの推移
営業キャッシュフローの伸びが良いです。
1株当たりの業績の推移
成長段階にある企業のため発行株式数は年々増加していますが、それでも1株当たりの売上は増加したままでEPSへの影響も抑えられていることは心強く感じます。
顧客数の増加
2013年から2022年Q2までで顧客数は年間平均して42%の成長、企業顧客に限れば53%の成長です。直近の数年でも成長に陰りは見えないため良質な成長率だと考えられます。
売上継続率(NRR)の増加
サブスクリプション収益に頼るビジネスモデルで重要視されるNRR(Net Retention Rate)は直近で124%を記録しています。これは既存顧客が契約を継続しつつアップグレードも行っていることを意味しています。
NRRが高い水準にあることは前述した顧客数の増加と合わせて強烈な印象です。Agreement Cloudを取り入れ始めるユーザーが増えつつあるということで、よりDocuSignの堀へと引き込むことが出来ているようです。契約フローの統合ソリューションであるAgreement Cloudのスイッチングコストは高くつくと考えられるため、今後どれだけのユーザーをアップグレードへ誘引できるかが業績に大きく関わることは間違いありません。
電子署名から始まり契約というフロー全体をソリューション化するDocuSignは魅力的な企業です。
Adobeという資本もPDFという市場も掌握した大企業がライバルにいることが気がかりですが、アクセス可能な市場の巨大さと現在までのNRRの好調さを見るとDocuSignからユーザーはそう簡単には離れないと考えており、今後の成長に期待しています。